第34話 診療時間の延長

「夜10時まで診療します」
 こう大きく書かれた看板を掲げた歯科医院が駅前にオープンしたのは先月のことだ。一方、春山歯科医院の診療時間は平日9時~18時半まで。これは近隣の歯科医院と比べると断トツで短い。
 (うかうかしてられない!)
 そう判断した春山は診療時間を20時までにすることにしたのだ。そうすると1日9時間30分勤務となってしまうので、シフトを組み、週3日は9時間30分勤務で、週1日ずつ7時間30分と4時間勤務の日にした。
 それをスタッフに説明したところ、非難轟轟の猛反対を受けることとなった。「契約は18時半までとされており、そのつもりで就職を決めて働き始めた。このような不利益変更は許されないのではないか」、また「1日の労働時間は8時間までと法律で定められている」というものだ。果たして春山歯科医院はこのまま診療時間を変更できないのだろうか。
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 勤務時間の変更はスタッフにとってあまり歓迎できるものではない。なぜなら給料が同じで勤務時間が少なくなることは皆無に等しく、そればかりか慣れた生活リズムが変わるストレスは予想以上に大きいからだ。では絶対に勤務時間を変更できないのかというと、そうではない。時代の流れに即した経営方針の変更や同業他院との兼ね合いもあり、今後を見据えて変更を余儀なくされることもある。
 この場合重要なのは、①きちんとスタッフとの話し合いの場を持つこと②十分理解してもらった上で必ず同意書を取ること③就業規則の変更届け出を行うこと④変形労働時間制導入の場合は協定の届け出を行うこと。
 そこまでしても、頑として同意しない者がいた場合はどうするのか。最終的には本人の選択(辞める・辞めない)に任せるしかないが、医院としては新しい勤務時間でスタートを切ることが可能になる。
 春山歯科医院の1日9時間30分勤務はどうなるのか。これは1カ月単位の変形労働時間制を導入することで、1日8時間を超える勤務も合法化される。ただし、週平均40時間以内に納めることが原則だ。