第33話 試用期間の注意点

春山歯科医院の院長春山は、自分の人を見る目のなさにすっかり自信喪失していた。
 今年に入って既に3回も修羅場をくぐり抜けている。経歴・身だしなみ・人当たり等すべてそろっていると、自信を持って採用した歯科衛生士が3人とも問題大有りで、このままでは医院の風紀を乱し、ほかの従業員に悪影響を及ぼすと判断して解雇したのだ。
 そもそも面接の数分程度でその人を判断するのは無理だ。インターネットから引っ張ってきた就業規則の「試用期間3カ月」も全く役に立たないではないか。試用期間だからダメだったら即クビにできると思っていたところ、そうではなかった。通常の解雇のように社会通念上相当と認められる理由がなければ不当解雇として訴えられるリスクも高い。
 その3人も、もめにもめて、脅し文句を残して辞めていった。脅迫状めいたものも届く。もうこんな思いをするのはこりごりだ。そこで根本から就業規則の見直しを行うことにしたのだった。
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 勘違いが多いので最初に申し上げておくが、試用期間3カ月は法律ではない。一般的には3~6カ月だが全く設けなくても良い。判例で2年3カ月の試用期間は無効とされているので、社会通念上の妥当性は問われる。
 最近増えているのは「有期雇用契約」と呼ばれるものだ。つまり、試用期間を有期雇用契約とすることで「本採用基準に満たない者は期間満了で雇用を終わらせることができる」というもの。1点目の注意点は契約時にそれを雇用契約書等の書面で明確にすることだ。通常の正社員と比べて不安定な立場であることは否めない。それでも貴院で働きたいと思うのかどうか。「そんな説明は受けていない」と言われれば、この有期雇用契約は通常の期間の定めなしの契約とみなされる。
 2点目の注意点はそれらを有効な就業規則に明示しているかどうか。10人以上なら従業員周知の上労基署に届け出ているか。10人未満でも周知をしているか。そこに「本採用基準、試用期間○か月は『有期雇用』であり、基準に満たなければ期間満了で退職となる」旨を記載しておくことだ。