第32話「3回遅刻、1日欠勤」は違法

歯科衛生士・金島ユリは、遅刻の常習犯だ。タイムカードには毎朝3分、5分、1分…と微小な遅刻が並んでいる。あと1本早い電車に乗れば防げると思うのだが、これまで院長春山が何度注意しても改善されることはなかった。気は利くし、仕事もできる。この遅刻癖さえなければ、ほかのスタッフの模範的存在なのだ。
 そんなある日、非常に興味深い話を聞いた。知り合いの勤務する一部上場企業では、3回の遅刻早退で1日休みとするそうだ。これなら金島も悪癖を断ち切るきっかけとなるだろう。早速この制度を就業規則に盛り込んだ春山であった。
 しかし、その期待を裏切り、金島の遅刻は続いた。1カ月集計すると12回、計17分の遅刻だ。そこで金島の給与から4日分の欠勤控除としたのだった。しかし給与明細を見た金島が、自分の非は棚に上げて、「たった17分の遅刻で4日休んだことにするのは絶対おかしい。出るところに出てやる」と言ってきたのだ。さて、これは違法なのだろうか。
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 制裁の一つ「減給」をご存じだろうか。しかし、これには制限がある。「今月は給与なしだ」というのは当然許されない。1事案につき平均賃金1日分の半額、総額では一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならない。1事案も社会通念上相当でなければ認められない。
 しかし、診療には影響を及ぼさない軽微な遅刻であっても、ほかのスタッフの士気を下げる原因となるので見逃すわけにはいかない。ノーワークノーペイの原則通り、遅刻した分を給与から引くことは減給には当たらないので、遅刻分はすべて控除できる。併用して減給の制裁を就業規則に盛り込んでおくことが、いざという時に功を奏す。つまり両方の併用も可能だからだ。
 制裁は就業規則に記載しなければ用いることは許されない。「3回の遅刻で1日欠勤」は昔は認められていた慣習的なものだが、明らかに違法なので、過去の記載がそのまま残っている場合にはご注意を。これに関連して、タイムカードの代理打刻は頼んだ者も引き受けた者も罰する必要がある。

日本歯科新聞1749号(2012/7/3)