第25話 特上ずしと休日出勤

 10月の3連休を使って行われた春山歯科医院の改装工事に、歯科衛生士2人が自ら手伝うと言って名乗りを上げてくれた。ほこりっぽい室内をふき、戸棚の荷物を戻した院内は新しい空気に満ちていた。
 自ら手伝ってくれた2人の労をねぎらい、特上ずしの出前を取り振る舞った春山は、(気立ての良いスタッフを持って幸せだ。日ごろからの信頼関係のたまものだな)と久しぶりに良い気分だった。ところが月末の給与日に2人が院長室に入って来てこう言った。
 「私たちが10月10日の祝日に出勤した分は休日出勤ですよね。法律では3割5分増のはずですが、今回の給与に反映されていないのはなぜでしょう?」
 彼女たちの狙いは当然、特上ずしなどではなかったのである。
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 春山歯科医院の1週間は、カレンダー通りの日曜日始まりの土日休日である。このうち1日を法定休日と呼ぶ。4週間に4日という法定休日の定め方もあるが、特に規定がなければ通常は1週間に1日だ。この法定休日に働かせた場合のみ、前述の3割5分の割増賃金の支払いが必要となる。つまり週1日の休みが確保されているのであれば休日出勤には当たらず、時間単価のみの支払いで事足りる。しかし仮にその休日を働かせることにより週所定労働時間(通常は40時間)を超えた場合には、2割5分の割増料金が発生することになる。
 さらに週所定労働時間を超えて、かつ週1日の法定休日に働かせた場合には、5割増しの賃金が発生していることになるので、特に注意が必要だ。「うちは後から別の日に休ませているから休日出勤にはならない」という事業主もいるだろう。
 ここで気を付けなければならないのは、後から与えた休みでは休日に働かせた休みの代わりにはなり得ないということだ。
 同じことじゃないか?、と反論する声も聞こえてきそうであるが、それは代休と呼び、振替休日は似て非なるものだ。後者の方は必ず「事前に」振替日を決めておくことが最大唯一の違いである。つまり、休日に働かせた後では後の祭りである。

日本歯科新聞1720号(2011/11/22)