第19話 高齢者雇用継続給付

 春山歯科医院の大御所、菅原きんは歯科衛生士として長きにわたって医院に貢献してきたが、来月で60歳を迎える。妙齢の年代同士ではトラブルになりがちな局面でも、肝っ玉母さんのような菅原がいることで丸く収まる場面が幾度とあり、若いスタッフからは「お母さん」と呼ばれ、慕われている。
 5年前の法改正を踏まえて、春山歯科医院ではやっと昨年、65歳までの継続雇用制度を導入した。しかし60歳以後、再雇用としての待遇は、給与面で大幅にダウンする。なぜなら菅原に続いて、これから数年の間に60歳を迎えようとしているスタッフがほかに3人いるのだ。
 正直、全員に残ってほしいとは思えない。しかし菅原は人格的にも技術的にも群を抜いて優れており、まさに春山歯科医院の歴史は菅原なくしては語れない。できる限りの好条件で菅原には残ってほしいが、人件費が医院を圧迫している現実も無視できない。そんな春山に朗報が飛び込んできた。
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 高年齢雇用継続給付をご存じだろうか。雇用保険の被保険者であった期間が5年以上で、60歳以降も継続して雇われる場合、60歳到達時点の各月の給与と比べて75%未満に低下した場合に、その給与の15%が国から支払われるものだ。
 例えば30万円だった菅原の月額給与が60歳到達後、18万円になった場合。低下率が60%なので、支給額18万円×15%=2万7千円が毎月国から支給される。これが65歳まで毎月続くことは、かなり大きいメリットではないだろうか。支給は本人の指定金融機関に振り込まれ、医院としては2カ月に1回、支給申請を行う必要がある。
 春山歯科医院では今後60歳を迎えようとしているスタッフが数名いるとのことだが、全員を再雇用することまでは要求されていない。本人が再雇用を希望していることが大前提だが、そのほかに過去の出勤率や健康状態、さらにこれまでの評価が一定水準以上の者であること等、基準を設けることも可能だ。それには前もって就業規則への記載と労使協定の締結といった一定の手続きが必要である。

日本歯科新聞1696号(2011/5/24)