第16話 新卒雇用で100万円

 4月初旬、新卒歯科衛生士を2人採用した春山歯科医院には初々しさが充満していた。歯科衛生士の募集をかけても一向に集まらない同業の医院が多い中、春山歯科医院に来てくれたのだから長く大切な人材として頑張ってもらいたいと、春山自ら積極的にその教育に当たっている。
 そんなある日、同業の情報交換会に出席した春山が自慢げに漏らした。
 「今年は右も左も分かんない衛生士を2人も抱えちゃって、うちは今てんやわんやだよ」
 すると春山歯科医院と同規模の歯科医院を経営する中村が口を開いた。
 「うちも今年は、3年ぶりに1人新卒の衛生士を雇った。国の政策には乗っかんないとな。去年はそんなのなかったけど今年はこのままいけば100万もらえるから、タイミングよく採用できたと思う」
 春山には何の話だか、さっぱり分からなかった。
 「100万円って何の話? うちは2人も雇ったけど何もないぞ」

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 「3年以内既卒者採用拡大奨励金」は、卒業後3年以内の大学等(大学、大学院、短大、高専および専修学校等)の既卒者も応募可能な新卒求人を出して、正規雇用すると採用から6カ月経過後に申請により100万円が支給となる制度だ。支給対象事業主は、上記の求人をハローワークまたは新卒応援ハローワークに出すことから始める。通常の求人申し込みとは少し方法が異なるので注意が必要だ。よって先述の春山歯科医院の新卒歯科衛生士には、残念ながら適用されない。
 過去半年に退職勧奨を含む解雇者を出していないこと。労働関係帳簿(出勤簿、賃金台帳、労働者名簿)を備え付けていること。2年以内に労働保険料の未納がないこと等、いくつかの条件はクリアしている必要がある。
 対象となる新卒者とは、(1)平成20年3月以降に大学等を卒業後3年以内の既卒者で、1年以上継続して同一の事業主に正規雇用された経験がない者。(2)雇い入れ開始日現在の満年齢が40歳未満の者。
 ただしこの助成金が適用されるのは1事業所で1名だけである。

日本歯科新聞1683号(2011/2/15)