第11話 スタッフの育児休暇 (上)

 歯科衛生士渡辺恭子から衝撃の妊娠宣言があったのは昨日のことだ。
 渡辺は春山歯科医院に就職して6年、本当によくやってくれている。手放したくない人材の1人だ。
 これまでは「妊娠したら退職する」というのが、春山歯科医院の暗黙の掟だった。育児休業の制度など、もちろんない。余計なスタッフを雇う余裕はなくギリギリの人数で回しているのに、1年近くもスタッフに休まれたら正直困る。代わりに人を雇うと言っても1年で辞めてもらえるのか。疑問が次から次へと湧いてくる。
 一方、知識の収集に余念がない渡辺は当然、育休を取るつもりでいた。
 一晩夫婦で相談した結果、春山歯科医院では初の産休と育児休業を取らせることにした。優秀な人材を大切にすることは、安心して働いていける職場環境を提供することなんだと、春山は改めて実感した。
 インターネットでいろいろ調べた結果、国が育児休業を取らせる企業を支援する助成金や保険料免除制度などがあることもおぼろげながら分かり、春山の心配も次第に和らいでいったのだ。
 ここまでは春山に何の落ち度もなかったはずなのだが、この話には後日談がある。
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 産前6週間・産後8週間、更にそれ以後子供が1歳(一定の場合は1歳半)になるまで「育児休業」という制度がある。
 まだ制度も前例もないという事業所にお勧めなのが「中小企業子育て支援助成金」だ。育児休業導入後、初めて制度利用者が出ると最大で100万円、更に3歳未満の子がいる従業員に初めて6カ月以上の短時間勤務制度を利用させた事業所は60万~100万円の助成金の対象になる。両者の併用も可。ただし、出産日前に1年以上継続雇用されていたことに加えて、6カ月以上の育児休業を取得したこと、そこから6カ月勤務したことが条件。また、平成23年度までの時限措置であることにも注意。
 他に、不在時の代替スタッフ(派遣でも可)を一定の要件で雇った場合の助成金もある。
 更に育児休業中の社会保険料は労使ともに免除になることも、ぜひ覚えておかれたい。

日本歯科新聞1662号(2010/9/7)